ヒメオオクワガタを追った熱い夏

ヒメオオクワガタ
ヒメオオが生息するヤナギ

2001年9月24日、我々おもしろ理科くらぶのしん氏は、ついにヒメオオクワガタの採集に成功したのでした。

ヒメオオクワガタ。。。。。マニアの間では、ポイントさえつかめば採集はそれほど困難ではないと言われていますが、

 

経験も情報もゼロからのスタート。初GETまでいかに長い道のりであったことか。。

 

 

ヤナギにつくヒメオオクワガタ
ヤナギにつくヒメオオ

<それ以前の経緯>

ヒメオオクワガタは、その重厚なボディ、やや長めのエレガントな脚、と、スーパースターオオクワガタに優るとも劣らない魅力的な形態のクワガタムシです。。彼らの生息地は標高1000メートルのブナ帯。雑木林のクワガタとは一線を画す深山幽谷の神秘的な存在なのです。

この魅力的なクワガタを捕まえてみたいと、活動を開始したのは何年前であることか。ショーンさんと2人で兵庫県北部をウロウロするものの手がかりさえ掴めず敗退。雑木林しか知らないわれわれは、ヒメオオが一体どんな樹に付くかも良く分かっていなかったのです。

このままじゃイカンと意を決してわれわれは兵庫県北部O山へ向かいました。ヒメオオといえば有名なのは福島の桧枝岐村。でも関西からはあまりにも遠い。では関西では、いったいどこにおるんかいな。。。雑誌や図鑑でいろいろ探して「O山にはいるらしい」という情報は掴んでいたが、それ以上の情報はない。頼るのはカンと図鑑に載ってる写真のみ。

 

→ヒメオオ採集方法とポイント解説はこちら

 

しかし雨の中の捜索で、われわれははじめてブナ帯のヤナギにつく黒いクワガタムシの姿を目の当たりにしたのでした。土砂降りの中われわれはパニックになって補虫網をつないで捕獲を試みたのですが、クワガタのついている場所はあまりに遠く、努力むなしく彼らの姿は雨の谷底へと消えていったのでした。

ヒメオオクワガタ 環境
ヒメオオクワガタが生息する環境

<ついにGET?>

私は悔しくてしかたがなく、帰宅後すぐ「奈良オオクワセンター」へFAXで8mのつなぎ竿を発注、翌週一人でO山へ向かったのです。早朝に自宅のある三田市を出発、片道4時間かけてポイントにつく頃にはすでにお昼前。早速先週クワガタを発見したヤナギの樹に双眼鏡を向けました。

するといきなり双眼鏡の視野の中にクワガタムシの姿が入って来たのです!急いで新調した8m竿をつないで準備し、その重い竿を慎重にクワガタムシの下から近づけ補虫網に。

「やった~!ヒメオオ初GETだもんね。。。」    そ~っと竿を手繰り寄せてネットを除くとチラリと赤い腹部が。。。「ありゃりゃ。。。」   良~くみてもやはり、、、「アカアシクワガタだ~」   残念ながらこの時はアカアシのみの捕獲で終り。だが雲を掴むようなポイント探しから、アカアシとは言え、同様の生態をもつクワガタを発見し、来年こそはとの思いを胸にポイントを後にしたのでした。

ヒメオオ採集風景
これが8mのつなぎ竿 実際は重すぎてあまり役にたった事がない

<再度O山に>

それから一年が経過し再びクワガタシーズンがやって来た。最初のチャレンジはお盆休みの8月12日。私とショーンさんははフル装備でO山に向かったのです。こんどは一泊体制でヒメオオGETだ~!まずは昨年アカアシを見つけたポイントへ。。。。ところがヒメオオどころか何もいない!気持は焦る。。。

 

二日目になってタカの眼しんさんが樹上で交尾しているアカアシのペア発見。とにかくボーズは避けたい一心で捕獲を試みるがからみあった枝先が遠くの方についており、8mのつなぎ竿でも届かない。諦めるしかないか?

 

<謎のマニア部隊長あらわる>

われわれが悪戦苦闘していると、声をかけて来た通りがかりの3人組。顔を見て唖然!春先にコルリ採集に来た時に遭遇したマニア部隊のみなさんではないか。なかでも隊長とおぼしき人物はタダモノではない雰囲気を漂わせ、春に会った時もいろいろとアドバイスをもらったので顔を良く覚えていたのでした。

隊長は早速「なんかいますか?」 

われわれはアカアシのついている枝先を指差し「遠くて届かないから無理ですね。」と言うと、事も無げに「採りましょう・・・・」と言い放ち、谷底へずんずん降りて行く。

 

道路上から竿を伸ばして採る事しか念頭になく、そのために長いつなぎ竿を購入したのに、谷底に降りるなんていう発想は無かったので唖然。下まで降りると隊長は「どこか~?もっと右か?」などと言ってクワガタの真下に立とうとする。路上の隊員が「もっと右!」などと指示をするチームプレー!

 

アカアシクワガタ
アカアシクワガタは普通種ながらエレガント

クワガタムシの真下に立つと、隊長は「じゃ!合図したら蹴ってくれ!」 。。。。。 その合図に合わせて隊員が木を蹴り、クワガタはポロリと下へ落ちます。そこで隊長はすばやくクワガタを谷底で拾い、路上まで駆け上がって来ます。その間わずか数分の出来事でした。

 

隊長は呆然とするわれわれにクワガタを渡すと、ヒーローのように名も告げずにその場を立ち去って行ったのでありました。谷底へ降りて拾うという新たな方法論に眼からウロコの落ちる思いのわれわれは、隊長が置いていってくれた大型のアカアシクワガタを前にして、ヒメオオ採集への新たなチャレンジを誓ったのでした。

<ヒメオオGETへ再トライ!> 

いよいよシーズン真っ只中の9月になりました。ヒメオオのシーズンは8月中旬から10月中旬と言われており、9月はもっとも個体数が増す時期です。

いつものショーンさん、しげどんに加え、新鋭のまさやん隊員を加えた総勢3人体制で再度O山のアタックを決行することになりました。

すばらしい秋晴れ!カーステレオで奄美の民謡CDを鳴らしながら、往路半ばすでに勝利を確信しているわれわれ。。。。

しかしなかなか見つからない。今回もしん氏がタカの眼でアカアシ一頭を発見したのみ。ヒメオオは一体どこにいるのか?

 

気をとり直し、明日はもっと標高の低いところから丹念に見よう。と決めてひとまずキャンプ場へ。。。

ヒメオオ採集風景
ヒメオオ確認中

翌朝も快晴に恵まれ、絶好のコンディションです。今日こそはの思いで張り切って捜索を開始しました。いままでよりかなり標高の低いところから丹念に捜索しようと、早めに車を止め、みんな一斉に車を降ります。私もじっくり捜そうと、双眼鏡をもって運転席を降りようとしたとたんに、早くもショーンさんが「いたぞ~」と興奮した声を上げたのです

<ついに発見!>

 

私は「まさか?」と思いつつ、木の側に駆け寄ると、すぐに「あ~落ちた!」とショーンさんの声。この間私とまさやんは何も見れず。。

ショーンさんは、「下で拾おう。。。」と木の下側を谷底に向かって降りようとしています。(そんな。。無理だろう。。。と私は思いました。あらかじめ下で待ち受けて見ていないかぎり、落ち葉や草むらの間から落ちたクワガタをさがすなどまず不可能だと思ったからです。

ヒメオオクワガタ
ようやくとったヒメオオ

ところが。。「いた~!ヒメオオだッ!」とショーンさんの声。私は信じられませんでした。しかし彼の手の中にはこぶりながらまぎれもないヒメオオ♂の姿がありました。。。。

 

くやしい!ボクも欲しい。。。もっとでかいやつを!と思って周辺の樹を血眼で探し出して間もなく、私の双眼鏡の視界に樹液を吸っているクワガタムシの姿が飛び込んで来た。「またいたぞ~!!」

ショーンさん、まさやん両隊員も早速双眼鏡を向ける。「あれっ!コレはさっきボクが見付けたクワガタだ。」なんとショーンさんが落としたと思ったのはカン違いで、彼は谷底で双眼鏡で見たのとは違うクワガタを偶然拾っていたのでした。なんというラッキーな偶然。でもコレはさっき拾ったものよりかなり大きい個体に見える。なんとか捕獲したいと、ツナギ竿で捕獲を試みます。落としてもいいようにしんさんが下まで降りて待機。絶対逃すまいとの意気込みでの捕獲作戦だったのですが、コレが裏目にでてしまいました。

クワガタはつなぎ竿のネット外枠に当たって大きく跳ね返り結局見失ってしまったのでした。。。。惜しい。残念。。

結局GETしたのはこの偶然の一頭のみ。

 

追記:その後我々は関東に拠点を移し、群馬、福島、山梨でヒメオオを採集できたのであった・・・→関東でのその後の採集記はこちら